【理】
「っと!?」

…と、物思いにふけりつつ、角を曲がろうとした瞬間、僕の行く手を遮る、緩やかで、重量感溢れるブレーキ音。

【お嬢様】
「芳村理…ね?」

【理】
「へ…?」

目の前に止まったのは、今まで僕の世界に関わったことのない、白いリムジンの高級車。

【お嬢様】
「申し訳ないけれど、お付き合いいただくわ。ちゃんと目的地までは送り届けて差し上げるから」

【黒服の男】
「どうぞ、芳村様、こちらへ」

【理】
「へ……?」

けれど、その車は…僕なんかよりも、よほどこの高級住宅街に溶け込み、周りの数少ない通行人たちにも、違和感を与えてはいなかった。